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    未洗浄ローマコインの完全クリーニング(洗浄)ガイド

    目次

    イントロダクション

    未洗浄のローマコイン(手前)とクリーニング後のローマコイン(奥)

    土の下で誰の目にも触れる事なく1500年から2000年以上も眠っていたローマコインを綺麗に掃除して現代に蘇らせる。

    なんと創造的な響き。そして意義と価値のある歴史修復プロジェクトでしょうか。

    市場に出回っている”既に何人(何十人何百人何千人)もの人の手で触られまくったコイン”や”鑑定に出されスラブに入れられ触れる事もできないコイン”を買い求める事を否定はしませんが、私は出土したままの状態の未洗浄ローマコインを自分の手で綺麗にクリーニングする事で、古代ローマの時代に埋められてから以降そのコインの表面に初めて触れる人間である事に何よりも喜びを感じます。プラスチックケースに収められたコインよりも直にこの手で歴史とディテールに触れられるコインが好きです。そして数万種類もあると言われるローマコインの図案を識別する楽しさも、自身の手で図案そのものをクリーニングで明らかにしたからこそひとしおです。

    しかしながらローマコインのクリーニングは適当に行うとコインに取り返しのつかない傷をつけてしまったり、時に全体的な状態を大きく損ねてしまいます。そしてネットには”正しい”ローマコインのクリーニング方法についてのガイドは殆どありませんし日本語のガイドは皆無です。

    こうした背景もあり「もっと気軽にこの歴史修復プロジェクトを楽しんで欲しい」との想いから、これまでに延べ数万枚のローマコインをクリーニングしてきたヤングスタンプの店主が、未洗浄のローマコインを傷をつける事なく綺麗に掃除する方法を徹底的に解説したのがこのガイドです。

    是非このガイドを読んで、正しい知識とやり方でローマコインのクリーニングを楽しんでください。

    そしてこのガイドはローマコインだけではなく、ギリシャやビザンチンのコインの他、数多のアンティークコインにもそのまま当てはめてお使い頂けます。

    ここで解説しているのは”趣味として”ブロンズコインを最も安全にクリーニングする為の方法です。安価な道具と少しの準備で気軽に始められる事に重点を置いた内容です。

    そもそもローマコインはどこから来るのか?

    クリーニング後のローマコイン

    古代ローマの時代には銀行や金庫といったものは存在していませんでした。

    従って各家庭や一族はアンフォラと呼ばれる壺にせっせとコインを貯めて(貯金して)、それを地中に埋めて隠していました。もちろんこうした小さな規模ではなく、遺跡から大規模に見つかるローマコインもありますが、基本的に埋めて隠すというのが当時の主流だったようです。

    そしてそれは戦場に出ていた兵士も同じ事。現地で給料として支払われたローマコインをジャラジャラと身に着けたまま戦いに出る事はしませんから、駐屯地や野営地付近で各自が埋めて隠していました。もちろん祖国に引き上げる際には掘り出して持ち帰るつもりでしたが、戦死した兵士が隠したコインは今も地中深くに埋まったまま発掘されるのを待っています。

    さて、発掘されたコインはどういう流れで一般人の手に渡るのでしょうか。ここでは出土以降の流れを書いてみたいと思います。

    STEP
    一番良いものは国が接収

    ローマコインを発掘したとしてもそれが全て発掘者の物にはなりません。出土したコインや遺物はまず国に届け出る必要があり、届け出されたコインは国(博物館など)がめぼしい物(歴史的に価値のある物)を接収した上で、残りが発掘者に戻されます。

    STEP
    卸業者が買い取り

    国に中抜きされたコインは発掘者の手に戻ってきますがそれらは卸業者が買い取ります。この道ウン十年という目利き揃いの卸業者は汚れたままのコインから、価値のあるコイン(主に金貨や銀貨そして希少な銅貨など市場流通価格が下は数十万円クラスから上は数億円クラス)と一般的なコインに選別してそれぞれをコインクリーニング業者に依頼して洗浄します。※卸業者の選別は汚れたままのコインであれどかなり正確です。どんな機械或いは手段を用いているのかはトップシークレットなので知る由もありませんが、彼らは未洗浄状態のコインから超級品を確実に選別します。

    STEP
    コインクリーニング業者にて

    卸業者が”価値がある”と判断したコインについては、プロのコインクリーナーが丁寧な手作業で1枚1枚を綺麗にクリーニングします。一方で一般的なコインは時給100円程度の低賃金で雇われた労働者が、強力な酸などの化学薬品を使ってひとまとめにクリーニングします。時には電気分解という水中に沈めたコインに通電する事で汚れを剥離させるという洗浄方法も使いますが、実際には焼かれているので黒く変色しディテールも損なわれてしまい、化学薬品洗浄と並び劣悪な洗浄方法の代名詞となっています。そんなこんなで手作業で綺麗にされた価値あるコイン、化学薬品(または電気分解)でクリーニングされた一般的なコインは卸業者に戻されます。

    STEP
    卸業者が再び選別

    プロのコインクリーナーが手作業でクリーニングした価値あるコインは卸業者から超富裕層や各国の王族と言った所謂VIPに販売されます。一方、ひとまとめに化学薬品で洗浄されたコインは更にその下の卸業者やディーラーに販売されます。

    STEP
    やっとこさ一般市場へ

    いくつかの卸業者やディーラーを経由したコインは最終的に小売業者に販売されます。コインを仕入れた小売業者は店頭に並べもしますし或いはネットで一般層に向けて販売します。これが普段私たちが目にするコインです。

    一度一般市場に流通したコインはその後何度も人手に渡る事もありますし、或いはこのどこかの段階で鑑定機関に出され格付けされスラブに入れられそしてそれもまた一般市場で流通していきます。

    稀に一般層向けのオークションでとんでもない価格のコインが出現する事がありますが、あぁいうコインはかつて卸業者からVIP層に売られた物が何らかの事情で一般市場に入ってきた物です。超富裕層や王族のコインコレクションではスラブに入ったコインは1枚もありません。ですのでこうしたコインが流通する前には必ず鑑定機関(格付けまたはグレーディング会社とも言う)で格付けされます。数百万円数千万円或いはそれ以上の金額の”鑑定されていない”コインを一般人は買わない(買えない)からです。

    バルカン半島や中東或いはヨーロッパで出土したコインは基本的に全てこの流れで流通していますが、ここに大きな問題点があります。

    一般の市場に流通しているコインは超高価な物を除けば殆どが化学薬品で洗浄されているという点です。これはスラブに入っていてもいなくても同じで例外はありません。現に鑑定機関では”目の前のコインの状態”については格付けしますが、どの様な洗浄がなされたか?までは見ていません(明らかに洗浄による損傷があれば別です)。そして化学薬品による洗浄は酸による溶解です。パッと見綺麗に見えるコインだったとしてもコイン内部にまで染み込んだ化学薬品は、その後何年何十年か先にコインを腐食し崩壊させるかもしれないと言う潜在的なリスクを抱えています。

    卸業者は当然として鑑定機関ですら、コレクターに収蔵されたコインがその後どうなるのかまで気にしていないという事です。

    それに鑑定基準も実際はかなり適当です。

    錆はともかくとして、明らかに化学薬品で過度に洗浄された結果表面がボコボコに崩壊したダメージコインでも鑑定結果はAU(準未使用品)です。確かに図案自体は比較的くっきり残っていますが、ここまで化学薬品で破壊されたコインを準未使用と言うには無理があります。このコインが今後どれだけ化学薬品の影響で腐食してくるかと考えると・・・貴方ならいくらで買いたいですか?私なら500円以下でも買いません。でもスラブに入ってグレードがAUというだけで数千円から数万円で売れるようになります。オーバースペックなグレーディングを付与する事で儲けている顕著な例ですが、こうしたスラブ入りコインが大量に出回っています。

    一方コレクターも馬鹿ではないので「鑑定基準やコンディションについて信頼できない」という事実が徐々に認知され、ローマコインやギリシャコインのコレクターの間では「スラブ離れ」と呼ばれる考え方が浸透してきています。 PCGSやNGCは全てのコインのスタンダードでありたい様ですが、少なくともローマコインやギリシャコインでは必ずしも彼らの鑑定や格付けが正しい訳ではないという事がわかってきました。

    一応書いておきますが決してPCGSやNGCといった鑑定機関を貶している訳ではありません。事実を列挙しているだけに過ぎませんし、何はなくともスラブ入りを好む人はそれで良いと思っています。要はローマコインやギリシャコインを収集するにあたってどこに重きを置くか?という価値観の話です。

    冒頭にも書きましたが私はスラブ入りは欲しいと思いませんし、例えスラブに入っていなくても数多の人の手を渡ってきたコインにも手を出しません。自らバルカン半島や中東の卸業者と直接取引の契約を交わし、彼らから「一般市場流通前の出土後手つかずの状態(未洗浄)で保管されているコイン」だけを購入して自身の手でクリーニングする道を選びました。この方法が最も良い状態のローマコインやギリシャコインを入手できるからです。しかも卸業者と直接取引なので贋作を掴まされる心配も皆無です。

    因みに私は中東の現役プロコインクリーナーから未洗浄コインのクリーニング方法を学びました。プロのコインクリーナーからその技法を学んだ日本人は日本広しと言え恐らく私だけな気がします。何せマニアックな世界ですし、敢えてコインクリーニングの技法を学ぼうと言う人はそもそも少ないはずですからね(*’ω’*)

    細部のディテールまで蘇らせたブロンズコイン
    極美品以上にまでクリーニングしたシルバーコイン

    上の2枚の画像に写っているコインはいずれも泥と汚れにまみれた状態で卸業者から買い付け、私が手作業でクリーニングしたコインです。クリーニングスキルも上達すると極美品(グレーディングで言うVFやXF)クラスを超える強烈なディテールすらこうやって蘇らせる事もできます。

    これからレクチャーするクリーニング方法はプロの使うそれとは若干異なります。あくまでも安価ですぐに揃う道具で手軽にしかも安全にコインクリーニングを実践する事を目的として書いていますが、根気よくやれば細部のディテールまでご自身の手で明らかにできるようになります。是非頑張ってみてください。

    流通前のローマコイングレーディング

    ローマコインやギリシャコインも流通市場では鑑定機関で用いられるVFやEFなんて語句が一般的です。が、これは流通後の話。流通前のコイン、つまり前述の卸業者たちの間では鑑定機関のグレーディングは使わず、それより遥か以前から用いられている彼らのグレーディング基準が存在しています。一旦コインクリーニング業者に預けられ洗浄されたコインは彼ら独自のそれによって取引されます。

    本題に入る前に彼ら卸業者が使うローマコインのグレーディングについて簡単に紹介しておきます。

    コインの状態鑑定機関のグレーディング卸業者のグレーディング
    全体的に摩耗していて識別が困難VG(VeryGood)Poor
    全体的に摩耗しているが大まかに図案の識別が可能F(Fine)Low
    一部しか摩耗しておらず図案の識別が可能VF(VeryFine)Middle
    殆ど摩耗しておらず図案が詳細に残っているEF(ExtremelyFine)Good
    ほぼ摩耗は見られず図案が詳細に残っているAU(Almost Uncirculated)VeryGood
    摩耗は見られず図案が詳細に残っている —–ExtraGood
    ExtraGoodに加えて希少性の高い図案—–MuseumQuality

    だいたいこんな感じです。もちろん摩耗以外にもチェックされる点はありますが、基本的に真っ先に目に飛び込んでくる図案の状態がやはり鑑定基準の中心となります。

    最後のMuseumQualityは滅多にその存在を見る事はできませんが、状態が良いのは当然として銅貨であっても大型の物や図案が珍しい物はMuseumQualityと呼ばれます。正に”博物館に収められ展示されてもおかしくないクオリティ”のコインを指します。

    道具を準備しましょう

    そろそろ本題に入りましょう。

    未洗浄のローマコインを手に入れたら、これから書き記すガイドに沿ってクリーニングを実施する事をおすすめします。ここに書いている方法が最も安全でローマコインにダメージを与える事なく綺麗にできる方法だからです。

    まずは最低限必要な道具を揃えてください。

    ローマコインクリーニングに使う歯ブラシ、綿棒、竹串

    未洗浄のローマコインをクリーニングするのに最低限必要な道具は下記の5つです。

    1. タッパー(3個)
    2. 蒸留水(2リットル程度)
    3. 硬めの歯ブラシ
    4. 綿棒
    5. 竹串

    どれもホームセンターや薬局で買えるものばかりですし、面倒ならアマゾンでも揃います。

    タッパーは密閉式のものを用意してください。歯ブラシは毛が硬めのものが良いでしょう。写真ではちょっとわかりにくいかもしれませんが、毛先は半分ぐらいの長さにハサミで切り落としておいてください。

    実践!ローマコインのクリーニング

    蒸留水に浸したローマコイン(左)
    STEP
    ぬるま湯で洗う

    まず、1枚1枚のローマコインに付着している汚れがどの程度のものかを把握するところから始めます。

    風呂場などで洗面器にお湯を張り、ローマコインをそっと入れてください。その時食器用洗剤を数滴お湯に混ぜておけばより効果的です。

    10分〜20分置いた後で1枚1枚取り出して流水の下で歯ブラシでこすります。食器用洗剤を使った場合は洗剤が残らないように注意してください。

    そこそこ力を入れてゴシゴシとこすっても大丈夫です。

    STEP
    乾かす

    洗ったローマコインは風通しの良い場所に24時間程置いて乾かします。両面乾かす必要があるので適宜裏返してください。

    STEP
    汚れの度合をチェックする

    コインが乾いたら汚れの程度をチェックします。

    左から汚れの激しいもの、うっすら図案が見えているもの、ほぼ図案が見えているもの

    こんな感じで、汚れの激しいもの、薄っすらと図案が見えているもの、ほぼ図案が見えているものの3グループに分けてください。

    STEP
    蒸留水に漬ける

    グループ分けしたコインごとにタッパーに入れ、ヒタヒタになるまで蒸留水を注いでください。

    蒸留水に浸したローマコイン

    この様にローマコインが完全に水没するまで蒸留水を注ぎます。そしてタッパーに蓋をして、ひとまず1週間放置しましょう。

    尚、蒸留水に漬ける事によって汚れが自然に剥離してくる場合がありますが、その時は蒸留水が汚れるので適宜交換してください。ですので1週間放置とは書いていますが日に1回はタッパーの蓋を開けて蒸留水が汚れていないかどうかチェックしてください。

    STEP
    歯ブラシでクリーニングする

    1週間経ったらタッパーからコインを1枚づつ取り出して歯ブラシでこすります。

    汚れが飛び散るかもしれないのでウエスなどの上でやるのが良いかもしれません。

    クリーニング中のローマコイン

    この時、竹串や綿棒でもこすってみてください。

    汚れが蒸留水によって柔らかくなっているなら竹串でごそっと落ちるかもしれません。また綿棒でこする事で落ちる汚れもあります。

    これらを使いこなしてゴシゴシとクリーニングし、ある程度汚れが落ちたのではないかと思えたら風通しの良いところに24時間置いて乾燥させましょう。

    乾燥させてからコインをチェックし、満足の行く結果が得られて無ければStep4に戻ってください。後は延々Step4とStep5の繰り返しです。

    以上が未洗浄ローマコインの基本的なクリーニング方法です。

    この作業で最も必要になるのは”忍耐”です。

    汚れが軽微なものは近いうちに図案が見えてくるでしょうし、汚れがひどいものは年単位の時間がかかるかもしれませんが、この作業は気長にやるというのが最もローマコインに与えるダメージが少ないです。

    クリーニング終了の目安

    ローマコインのクリーニングの終了地点は、貴方がどこまで綺麗にすれば満足するのか?という点に尽きます。

    貴方がクリーニングの結果に満足した時がそのコインのクリーニング終了となりますが、ひとつの目安としては細部まで識別できる事という点になろうかと思います。

    2枚のクリーニング済みローマコイン

    上の画像は2枚ともクリーニング済みのローマコインです。

    左側のコインはまだ汚れが残っていますが、それでも細部は明らかになっているので十分に識別は可能です。一方で右側のコインは汚れが全く無い状態にまでクリーニングされています。

    どちらが良いのか?については完全に個人の好みの問題ですが、歯ブラシと綿棒それに竹串では左側のコインのレベルにまでしか綺麗になりません。

    右側の”汚れが何もない状態”にまでクリーニングする為にはより高度な技術が必要になってきますが、やるだけの価値はあるかもしれません。細かなディテールが残ったコイン程、より綺麗にする事で美術館に所蔵されるレベルの美麗さを取り戻す物が多々ありますから。

    ただし全く汚れがない状態にまでローマコインをクリーニングする為には、かなりの熟練したスキルと根気が必要になります。

    更にクリーニングする場合

    全く汚れがない状態にまでクリーニングしたいという場合は、別途更に機材が必要になります。

    1. 実体顕微鏡
    2. 専門的なクリーニングツール類
    専門的なクリーニングツール類

    実体顕微鏡は必須です。これなくして肉眼のみで完璧なクリーニングは不可能です。

    ツールに関しては自身で色々と試して見て好みのツールをチョイスしてください。

    私の場合は写真左から、ダイヤモンドコーティングされたピンとピンバイスで4種類、歯科用ピック、ダイヤモンドコーティングされた極細丸ヤスリ、極細彫刻刀、クリーニング用コンポジットペン2種を使い分けています。写真には写っていませんが、更に汚れの度合いにより使い分けるツール類や仕上げに使うツール類などもあります。

    細部まで綺麗にしようとすると、様々な状態の汚れに遭遇します。これら汚れの種類によっても有効なツールとそうでないツールが出てきますので、この辺りは経験を積みながら道具を揃えていく他ありません。

    しかし汚れが完璧に取り除かれたローマコインの美しさには目をみはるものがあります。

    完璧にクリーニングしたローマコイン

    時にローマコインのクリーニングはアートだと言われることがありますが、あながち間違いではないでしょう。細密な手作業によるものなので化学薬品で綺麗にするより遥かに手間がかかりますが、薬品による潜在的なリスクがなくここまで綺麗にされたローマコインは小さなサイズのブロンズコインだったとしても一定の価値が生まれます。

    1500年以上の時を経て当時に近い状態にまで蘇らせたローマコインは正に芸術品。そこにはクリーニングする人のスキル次第という部分が大きいですが、挑戦してみる価値はあるかと思います。

    しかし専門的なクリーニングツールは扱いが難しいです。力加減を間違えるとコイン自体に傷をつけてしまう事もあります。慣れないうちはもしかすると何枚もコインに傷をつけてダメにしてしまうかもしれません。

    「そこまではできないな」と思った方はStep1〜Step5までを繰り返してください。根気さえあればそれでも十分に細部まで明らかにできるはずです。

    パティーナ(緑青)は残しましょう

    ローマコインは物によっては経年によるパティーナ(緑青)と言われる一種の錆が、部分的または全体的に発生している場合があります。

    パティーナを残してクリーニングが完了したローマコイン

    このパティーナはコインの表面に皮膜を作って保護する効果や抗菌効果が認められており、クリーニングの過程でこれは残しておくものです。過度なクリーニングをする事でパティーナ自体も消してしまう事は可能ですが、パティーナが剥ぎ取られた痕跡は必ず残りますしそれが認められるローマコインの評価は著しく下がるので注意してください。パティーナは歴史そのものであり、これが付着している事はローマコインの価値を下げるどころか寧ろ高めてくれます。

    またパティーナ(緑青)は読んで字の如く青緑色の物が多いですが、ローマコインが地中に埋まっていた環境(土、砂、海など)によっては赤や茶、黒といった色味の緑青も存在します。従って青緑色ではないからと言って異なる色味のパティーナを無理に剥ぎ取らないようにしてください。※付着している物がパティーナなのか単なる汚れなのかを見極めるのもスキルのひとつです。

    上の画像上段の5枚は中東の砂漠地帯で出土したコインです。砂漠地帯特有のサンドパティーナと呼ばれる茶系色のパティーナで覆われているコインは、この様にディテールのみをクリーニングする事で立体的な仕上がりになります。昨今欧米のコレクターの間で熱狂的人気を誇るクリーニング方法です。

    中段や下段のコインは1枚1枚をクリーニング前に見分し、適宜パティーナを残した形で作業完了したコインたちです。写真ではわかりにくいですが基本的には全体を覆ったパティーナは残しつつディテールそのものは細部まで見える様にと、プロのスキルが光るオーソドックスなクリーニング方法です。

    サンドパティーナを残してクリーニング完了したコイン

    こちらも私がサンドパティーナで覆われた状態で出土したローマコインを、ディテールだけ見える様にクリーニング完了したコインたちです。サンドパティーナはこの様に効果的に残す事で図案を立体的に見せてくれ、非常に美しい印象に仕上がりますので私も大好きです。

    よくある質問

    未洗浄のローマコインをクリーニングするにあたって、疑問に思いそうな点をQ&A形式でまとめてみましたので参考にしてください。

    オリーブオイルは使わないんですか?

    オリーブオイルは一説ではコインに付着した汚れを柔らかくする効果があると言われていますが、わずかに酸性ですので汚れに加えてコインそのものにもダメージを与える恐れがあります。ネットで調べると様々な意見が飛び交っていますが確たるところは言えないので私は使わないようにしています。何よりオリーブオイル臭がしてどろどろになった状態のコインに触ろうと思えません。

    もっと早くて簡単なクリーニング方法はありませんか?

    化学薬品や電気分解と言った方法は一度に大量のコインを素早く洗浄できます。しかしながらいずれの方法もコインが将来的にダメになる潜在的なリスクを抱えている事になるのでおススメしません。

    こうした洗浄方法は、早く大量に売りさばく必要のある業者が採用している方法です。業者としては如何に素早く洗浄して売りさばくか?が日々の収入に影響しますし、いちいちコレクターの事まで考えていません。そして残念な事に現在の市場で流通しているローマコインやギリシャコインは、殆どがこうした過度な洗浄でクリーニングされた物です。

    今現在綺麗に見えても、その後内部からボロボロに崩壊するかもしれないコインを大事にコレクションしたいと思いますか?そう思わないのであれば安易なクリーニング方法は実施しない事です。

    蒸留水の代わりに水道水ではいけませんか?

    水道水にはなく蒸留水にはあるミネラルがコインに付着した汚れを柔らかくしてくれるようですので、水道水にどれだけ長く漬けていても汚れが柔らかくなる事はないので意味がないでしょう。

    真鍮製のブラシは使えますか?

    硬い或いは厚い汚れが付着している部分には有効ですが、力加減を間違えるとコイン自体に傷をつけかねませんのであまりオススメはできません。

    未洗浄ローマコインクリーニングのまとめ

    とにかく、短気は損気です。

    忍耐強く気長に構えて、時間のかかるものだとわかった上で取り組んでみてください。でも冒頭で書いたように汚れを取り除いた後のローマコインの表面に触れた人は、そのコインが埋められてから以降では貴方が人類初です。もしかするとそのコインは、1500年以上も前から貴方に触れられるのを待っていたのかもしれませんね😁

    そして一番大切なのはクリーニングそのものを楽しむ事です。趣味ですから楽しまない手はありません。

    自分の手で綺麗にしたローマコインをコレクションするというのも、お金さえ出せば買える物を手早く集めるだけよりもまた違った楽しみがあろうかと思います。

    昨今イタリアやギリシャで出土したローマコインの国外持ち出しが禁止されているとかで、程度に関わらず流通量自体が少なくなってきています。私が繋いでいるパイプもいつまで持ってくれるかわかりませんが、未洗浄のローマコインが入手できている限りはこの優雅な趣味を楽しみ続けたいと考えています😁

    ローマコインのクリーニング風景を動画で配信中です

    Youtubeのヤングスタンプ公式アカウントで、ローマコインのクリーニング風景を動画で配信しています。

    文字や写真だけでは分かりづらい部分もあるかもしれませんので是非一度ご覧ください😁


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