ペニーブラック、ペンスブルー、ペニーレッドのプレーティングガイド
プレーティングとは
こんにちは。
イギリスクラシック切手を代表する切手と言えば・・・やはりペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドではないでしょうか。これらはイギリスクラシック切手のみならず、クラシック切手全般という大枠でも代表格と言える切手です。
そしてこれらの切手を収集するにあたり、最も難解且つ困難で楽しめる専門収集と言えばそれはプレーティングです。
ペニーブラックを始めこれらの切手は同じ図案であっても、複数の原版から印刷されたので微妙な差異が存在します。そしてこの差異から得る情報でその切手がどのプレート(版)で刷られたものかを特定する作業をプレーティングと呼びます。
正直、プレーティングを正確に行えるようになるにはもしかしたら長い年月がかかるかもしれません。それぐらい極めるには険しい道です。事実、本国イギリスでは有償でプレーティングを請け負う専門家(プレーター)が居るぐらいです。
しかしプレーティングを自分で行えるようになると、ペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドの収集に深みが増します。これらの切手を最も知り尽くす事ができる喜びを味わえるのはプレーティング以外にはありませんし、生涯に渡って楽しめる趣味である事も魅力のひとつです。
またペニーブラックに始まりペンスブルーやペニーレッドは、プレートによって評価額にも実際の取引価格にもかなりの差があります。プレーティングができるようになる事で、手持ちのこれらの切手を正しく評価できる基準ともなります。
使用済みカバーの場合はプレーティングする事で消印との整合性を確認し真贋の判定に最も有効な手段となります。
このページでは『ペニーブラック、ペンスブルー、ペニーレッドのプレーティングガイド』として、これからプレーティングに挑戦してみよう!と考えている人の為にプレーティングのノウハウをお伝えしていきます。
プレーティングで分かる事
プレーティングする事で以下の様な事柄が分かるようになります。
- 正確な発行年月日
- 使用例(消印)の真贋
- 各プレートで刷られた枚数
- 各プレート固有のエラーやバリエーション
- 各プレートが用いられる事になったバックグラウンド
- プレートに依る正確な価値(評価額)
こうした事柄がプレーティングする事で判明します。ペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドの収集の幅を広げ、尚且つコレクションに深みを持たせてくれるプレーティング、是非挑戦してみてください。
プレーティングの対象となる切手
プレーティングの対象となる切手は5種類です。
- ペニーブラック
- ペンスブルー(無目打)
- ペンスブルー(スター)
- ペニーレッド(無目打)
- ペニーレッド(スター)
上の5枚がプレーティングの対象となる切手で、これらとは別にペンスブルーとペニーレッドにはプレートタイプと呼ばれる切手があります。※上図では写っていませんが無目打ペンスブルーのホワイトラインなしもあるので対象としては全部で6種となります。
この2種類はプレーティングの対象ではありません。
違いは何かと言うと、切手上部左右のパーツがスターかアルファベットかの違いです。下の2枚については上部左右もアルファベットになっています。これらの切手は画像では見づらいかもしれませんが、印刷に用いられたプレートの番号が切手表面に印刷されているのでひと目でプレートがわかります。従ってここで言うプレーティングの必要がありません。ただしプレート番号(2桁または3桁の数字)は肉眼では見えにくい事があるのでルーペが必要です。言い換えればルーペさえ持っていれば誰でもプレーティングができる切手です。
切手下部左右のアルファベットをチェックレターまたはコーナーレターと呼び、プレーティングに際してはこのチェックレターから得られる情報を最も重要視します。また無目打切手に関しては切手上部左右の余白(マージンと言います)の有無も重要です。
一方で最初の5枚(6種)は上部左右がスターと言われるタイプです。このスタータイプはプレート番号が印刷されていませんのでプレーティング作業を行いプレートを特定する必要があります。
ペニーブラックは無目打しかありませんが、ペンスブルーとペニーレッドの無目打はプレーティング対象です。加えて目打有りペンスブルーとペニーレッドのスタータイプもプレーティング対象となる、と覚えておいてください。
プレーティングに適した切手とそうでない切手
プレーティングをするにしてもなんでもかんでもプレーティングができる訳ではありません。特に無目打の切手は発行当時にハサミでシートから切り取られて使用されていたので、切り取られ方によってはプレーティングに適さない物もありますので順に解説していきます。
プレーティングに適した切手
最もプレーティングに適した切手は、4マージン(切手の上下左右に余白がある事)であると共に使用済みの場合は消印がチェックレターにかかっていないかかかっていても軽微な物が理想的です。
まずまずプレーティングに適した切手
4マージンではないもののチェックレターの情報がほぼ読み取れる切手はプレーティングにまずまず適しているでしょう。チェックレターが完全ではない場合、上部左右のスターやその他印面全体の情報をも使ってプレーティングする事になるので少々難易度が上がります。
プレーティングに適さない切手
プレーティングに適さない切手は4マージン以下でチェックレターの大部分が切れてしまっている物や、使用済みの場合は消印がチェックレターを隠してしまっている物などが該当します。左の切手は0マージンなのでチェックレターそしてスターも正確に読み取れません。こうした切手でもチェックレターによっては非常に顕著な特徴を備えているプレートの場合は容易にプレーティングを行える事がありますが、そうではない場合情報量が乏しいので正確なプレーティングは非常に難しくなります。
入手するなら4マージンがオススメ
以上の事から4マージンでチェックレターが綺麗に見えている物が最もプレーティングに適した切手だとわかりました。従ってこれからプレーティングの為にペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドを購入されるのであれば、できるだけ4マージンの物を購入するようにしましょう。仮にチェックレターに消印がかかっていて見づらくても、4マージンであればチェックレター以外の情報を得られやすいのでプレーティング作業が捗りますし正確なプレーティングが可能です。それに何より見た目にも美しいですよね😊
| 切手のタイプ | 4マージン最低購入価格※1枚あたり概算 |
|---|---|
| ペニーブラック | 3万円〜 |
| ペンスブルー(無目打) | 6万円〜 |
| ペンスブルー(無目打)ホワイトライン | 1万円~ |
| ペンスブルー(スター) | 5000円〜 |
| ペニーレッド(無目打) | 1000円〜 |
| ペニーレッド(スター) | 300円〜 |
ざっくりですが4マージン(目打有スタータイプはできるだけウェルセンター)使用済み1枚の最低購入価格はこれぐらいを考えておきましょう。
使用済みですからこれに消印の種類や状態が加味される事になり、希少な使用例になればなる程に価格は文字通り天井知らずに高くなります。またペアやストリップ或いはそれ以上のブロックになればなるほどにこれも価格が跳ね上がります。事実ヨーロッパのフロアオークションでは希少ブロック等は数千万円から数億円と言う金額で落札されています。
例えばペニーレッド(無目打)に赤色のマルタ十字消印が押されていれば20万円でも購入できませんし、この中で最も安価なペニーレッド(スター)でも目打や用紙に刷り色そして消印など様々な要素が加味され、希少な物では100万円を超える物も存在します。ペンスブルー(無目打)で赤マルタ十字消印が8割以上入って押されていれば軽く5万円を超えてきます。
もちろん既にプレーティングされているものであればプレート毎に評価額も異なってきます。希少なプレートで刷られた物はそれだけ高額になります。例えばペニーブラックのプレート11であれば使用済みで最低でも50万円程度必要です。或いはプレート自体は希少でなくともプレート固有のエラーやバラエティを備えた個体は非常に高額で取引されています。
ルーペさえあれば手軽にプレーティング可能なペニーレッドのプレートタイプでも、現在世界で4枚しか存在が確認されていないプレート77であれば近年日本円で1億2000万円の値段がつきました。
そして昨今、ペニーブラックやペンスブルーは価格が高騰してきています。
裏書きされたプレート番号はアテにしない事
収集しているとこの様にプレート番号が鉛筆で裏書きされた切手に出くわす事が結構ありますが、同じプレート番号が記載された鑑定書でも付いていない限りは信用しないでください。
これはかつての所有者や切手商が、後述する「一昔前のプレーティング方法」でプレーティングした名残です。
一昔前のプレーティング方法では、元となる往年の専門書籍に記載されている情報自体が間違っている場合がある事が現代で判明している物が多々ありますので信頼に値しません。実際間違っている場合が大半ですし、或いは素人がプレーティングしただけかもしれません。
例え裏書きがあったとしても自分でプレーティングする様にしてください。
ヤフオクでかつての所有者のプレーティング数字の裏書を鵜呑みにして出品している方がいらっしゃいますが、上記の通り過去のプレーティングはアテになりませんのでご注意ください。
各切手のプレートの数と難易度
一口にプレーティングと言っても、使われたプレートの数の大小で難易度は大きく異なります。
最も簡単なのがペンスブルー(無目打)でプレートは4種類しかありません。ペンスブルー(無目打)にはパッと見てわかるレベルで2種類に分類でき(ホワイトラインの有無)、それぞれの種類で使われたプレートは2種類づつしかないので最も簡単です。次いでペンスブルー(スター)でこちらもプレートは3種類とごくわずかです。
ペンスブルーの次にプレーティングが容易なのはペニーブラックです。ペニーブラックで使われたプレートは12種類しかありません。
一方でペニーレッド(無目打)ではペニーブラックの印刷で使われた物と同じプレート(1b、2、5、8、9、10、11)で刷られた7種類に加えて、専用プレートで刷られた12〜177まで非常に多くの種類のプレートが存在しています。更にペニーレッド(スター)ではプレート176〜204、R1〜R6、1〜68そしてR15〜R17と更に多くのプレートが存在しています。事実ペニーレッドで使われたプレートは約427種類にも及びますのでプレーティング作業の中でも最も困難です。
種類が少なく簡単な切手であっても、チェックレターによってはプレートが違えどレターの位置や形状がほぼほぼ同じに見えるような個体もあるので、簡単だから全ての切手をホイホイとプレーティングができるという事ではありません。例えばペニーブラックのレターIGはプレート6と10でレターの位置や形状がほぼ同一です。高解像度スキャンしたデータをフォトショップで拡大しても見分けがつかないレベルです。こういった場合はレター以外の要素も考慮したプレーティングをする事になるので、知識と経験それから下で紹介している『THE ESSENTIAL GUIDE TO THE GREAT BRITAIN LINE ENGRAVED 1d AND 2d STARS 1840 –1864』の様な専門書が必要になります。逆に特徴的なレターや要素を持った個体であれば、1枚あたり数分でプレーティングが完了する程簡単なものもあります。
一昔前のプレーティング方法
ネットが普及する前のプレイーティング手段と言えば、それ専門の書籍を複数冊用意して行うという方法が一般的でした。
"The Plating of the Penny"に代表されるいくつかの書籍は今でも古書で出回っていますが、今となっては少々手段としては古臭いと言わざるを得ない手法です。
プレーティング自体現在に至ってもその全てが解明されている訳ではなく、日々ネット上のフォーラムなどで専門家やコレクターが活発にやり取りしています。これらの書籍が発行されてから以降も新しい発見は数多くなされていますが、書籍はその性質上発行後に発見された新しい情報は盛り込まれていません。しかも書籍自体にも記述の誤りがあったりするので残念ながら古い情報しか記載されていない書籍や部分的に誤った内容が記述された書籍に頼るプレーティング作業は不正確なものになってしまいます。
もちろん補助的に今でも有用な書籍というものはいくつかありますので、興味のある方は別途ご自身で調べて入手しても良いでしょう。
因みに私はこれから解説するプレーティング方法に完全に移行したので持っていた書籍は全て売却しましたが、これら書籍を使ったプレーティングが有効ではないという事ではありません。
またスタンレーギボンズの専門カタログについては必須の書籍となりますので後ほど詳しく解説しています。
現代流のプレーティング方法と必要な道具類
現代においてのプレーティングは、ネットが発達した利点を最大限に活かした方法がベストです。そのため少々準備に初期投資が必要になりますが、私も行っている下記の方法をオススメします。
昔に刊行された専門書籍だけでプレーティングを行うにしても、今では入手困難な書籍もありますのである程度の初期投資はいずれにしても必要です。であればこれから説明する方法にお金を使った方が有効だと思います。
高解像度データを購入する※必須
ペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドの全てのチェックレターの高解像度写真が収録されたCD-ROMを購入します。2025年から購入代行や取次を止めましたのでご自身で英国切手商に問い合わせてみてください。
例えばこれはペニーブラックとペンスブルー、ペニーレッド(無目打)のチェックレターDCのプレートのデータです。お持ちのペニーブラックのチェックレターがDCの場合はこの高解像度データと見比べる事でどのプレートで刷られたチェックレターDCの切手なのかがわかるという事です。正確に見比べる方法があるのでそれは後述しますが、本をめくるスタイルのプレーティングよりも断然早くて楽で正確です。
全部で10枚のCD-ROMは各35ポンド。1枚あたり日本円で7000円ちょっとで購入できます(2024年7月のレートで計算)。全部購入しても送料を入れてざっくりですが8万円程度で購入できます。
もちろん全てを一気に買う必要はありませんので、例えばペニーブラックのデータだけ欲しい場合は該当のデータが収められたCD-ROMだけを購入しても構いません。ですが海外からの購入の手間暇と今後ペンスブルーやペニーレッドのプレーティングまで行う予定であれば1回で全部買った方が楽です。
因みにこのCD-ROMは定期的に中のデータがアップデートされています。2年おきぐらいに販売元に購入証明と共に「アップデートはあるか?」と尋ねればアップデートがあれば教えてくれますし追加でいくらか払えば最新版のCD-ROMを送ってくれます。
フォトショップを購入する※必須
アドビが販売しているフォトショップという画像編集ソフトを購入してください。
先程紹介したプレートの高解像度データを購入したら、それをフォトショップで読み込むのと同時にお持ちの切手を高解像度でスキャンしたものとを重ね合わせ、合致するプレートを調べていくという作業になります。これはフォトショップに備わっているレイヤー機能やガイド機能等を使って行う必要があるのでこのソフトは必須です。
尚、現行バージョンのフォトショップは月額数千円で使うことができます。年払いの方が多少安いかと思います。
スタンレーギボンズの専門カタログを購入する※必須
イギリスクラシック切手を詳しく解説しているカタログは、やはり本家スタンレーギボンズが代表格ですね。
スタンレーギボンズではイギリス切手を中心に様々な切手カタログを販売していますが、この中でプレーティング作業に必須のカタログを紹介します。
赤いほうがスタンレーギボンズの専門カタログ旧刊です。青い方が新刊ですが両者共に絶版しているので、紙ベースの購入は滅多に市場に流れてきませんが中古本を探すしか術はありません。
内容としてはペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドの歴史から製造過程、テスト印刷といった前知識的なものから各プレートが使われた時期や詳細な情報、評価額などプレーティングに必要な事柄が網羅されています。
どちらか1冊で構わないのでスタンレーギボンズの専門カタログは必ず持っていてください。これがないとお持ちの切手のプレートが判明してもそこから何も得られません。
スキャナー※必須
スキャナーも必要ですが安価な物で構いません。数千円で購入できます。
最低要件としては600dpiでスキャンできる性能があればなんでもいいです。私はCanonのLiDE220というパソコンとUSB接続で使える安価なスキャナーを使っています。
最も専門的なプレーティング書籍を購入する※任意
DR.KENNETH W. STATHAM著の『THE ESSENTIAL GUIDE TO THE GREAT BRITAIN LINE ENGRAVED 1d AND 2d STARS 1840 –1864』という書籍があります。
30年以上ペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドの研究に携わってきた氏の研究結果の集大成とも言える専門書籍です。
全18巻で化粧箱に入っており、スタンレーギボンズの専門カタログですら到底足元にも及ばない詳細なデータが記されています。事実、これ以上詳細に各プレートのデータが網羅された書籍は他にはありません。正にプレーティングのバイブルと呼んでも差し支えのない専門書籍です。
プレーティング作業の過程でプレートの特定が難しい切手に出会う事はなかなかの頻度で発生しますが、そんな時にこの書籍を紐解けばかなりの助けになります。事実私はこれまでペニーレッドを中心に述べ数万枚もの切手をプレーティングしていますが、プレーティングが困難な物に行き当たった際は必ずと言っていい程この書籍に助けられています。
ペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドのプレーティングを極めるなら持っておいた方がもちろん良いのですが、購入代金は送料を入れると日本円で中古品でも10数万円と高額になります。新品は今は販売していないかもしれませんし、販売していてもフルセットですと20万円近くになるかもしれません。
プレーティングの手順
必要な物は全て揃いましたか?揃っていないならば先に揃えましょう。必須と書いた物がひとつでも欠けているとプレーティングは行えません。
これから解説するプレーティング方法は現代流且つ私が日常的に行っている方法ですが、高解像度データとスタンレーギボンズカタログそしてフォトショップとスキャナーが揃っていないとできません。
以上の必要な物が全て揃っている前提で、ペニーブラックを使って実際のプレーティング手順を説明していきます。
スキャンする
まずプレーティングしたい切手(ペニーブラック、ペンスブルー、ペニーレッド)をスキャナーを使ってスキャンします。
この時必ず600dpiでスキャンしてください。600dpiですとスキャンするのに数十秒かかりますが、これ以下の解像度でのスキャンではプレーティングに使えませんので注意してください。
スキャンが完了したらフォトショップで開き、上の画像の様に余白を少々残した状態で切り抜きます。
高解像度データを開く
購入した高解像度データのCD-ROMからペニーブラックのチェックレターQHのファイルをフォトショップで開いてください。
これがチェックレターQHのプレートデータです。
スキャンしたデータをプレートデータに重ねる
先にスキャンしたペニーブラックの画像を、プレートデータの画像にドラッグアンドドロップして重ねて表示させます。
この様にスキャンしたデータをプレートデータの画像に重ね合わせます。
この時スキャンしたデータの方(レイヤー)がかなり大きく表示されているはずなので、サイズ調整でプレートデータに掲載されているペニーブラックと同じサイズになる様に調整してください。必要であれば傾きも微調整します。※傾きの微調整はガイド機能を使うと便利です。
またこのままでは重ね合わせた時にプレートデータの画像が見えなくなるので、スキャンした方のレイヤー透明度を60~70%程度にして少し透ける様にしておきます。
照合してプレートを特定する
ペニーブラックにプレートは12種類しかありませんので、スキャンしたペニーブラック(透けた状態です)をプレート1Aと書いてあるペニーブラックから順にドラッグしつつ重ね合わせて照合していきます。
必ずぴたりと一致する物がありますので、それが調べたいペニーブラックのプレートだとわかります。
このペニーブラックの場合はプレート1Bの高解像度データとピタリと一致したので、プレート1Bで刷られた物だとわかりました。
※スキャンデータの方は細かいサイズ調整をして必ず1枚1枚のデータ側とジャストフィットさせてください。プレートによっては非常に微細な差異しかない物もあり、前提としてジャストフィットさせないと正確に合致するプレートを特定できません。ジャストフィットの際はリサイズや傾きの調整だけでは困難な事がありますので、その際は自由変形などの機能も使うようにしてください。
「いちいちスキャンしてPhotoshopで開いて・・・1枚1枚そこまでしないといけないの?現物とCD-ROMの画像を見比べるだけでプレーティングはできるんじゃないの?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、現物とモニター上に表示されているCD-ROMの画像を見比べる方法は著しく不正確で誤ったプレーティングを行う可能性が非常に高いです。プレート数の少ない(最も簡単にプレーティングができる)ペンスブルーであったとしても、プレートは異なるもののチェックレターの位置や形状が非常に似通っていると言うケースが結構ありますので、これを肉眼で見分けるのはまず無理です。
下に記載している様にチェックレターが似通っている場合は他の要素も考慮しなければいけないのですが、チェックレター以上に細かく印刷されているスター部分やその他の要素を、似通ったチェックレターすら判別できないのであれば更に肉眼での識別は無理だと言わざるを得ません。ですので正確なプレーティングを行いたいのであれば面倒でもここまでの手順を踏襲してください。かつて書籍を用いたプレーティング方法が甚だ不正確だったのも、肉眼で見比べていたからに他なりません。本場英国でウン十年と切手商を営んできたプロですら肉眼でのプレーティングではかなり間違った判断をしている事実からも、肉眼でのプレーティングはおよそ現実的ではないと思ってください。
一致するものがない場合や一致していそうなものが複数ある場合
一致するものがないという事はありませんのでどこか何かを見落としています。今一度順番に照合してみてください。
一致していそうなものが複数ある場合は、似たようなチェックレターのプレートが複数存在する場合に発生します。しかし実際にプレートを調べたい切手と一致するプレートは1つしかありませんので、どれかが正解で残りは間違いだという事になります。
チェックレターだけでは一致するプレートの判別が困難な場合、切手上部左右のスターの部分でも照合してみてください。スターもピタリと一致するものがあればそれが調べたい切手を印刷したプレートだとわかります。
スターまで照合してもまだプレートがわからない場合は、先程紹介したスタンレーギボンズの専門カタログ等の専門書籍を開いてみましょう。※スタンレーギボンズの専門カタログで解決しない場合は、先程紹介した高額な書籍『THE ESSENTIAL GUIDE TO THE GREAT BRITAIN LINE ENGRAVED 1d AND 2d STARS 1840 –1864』の出番です。
専門書籍には例えばチェックレターがQHのペニーブラックでも、プレート毎に持っている印刷時のエラーや特徴等が(あれば)記載されていますので、それらの情報を手がかりにする事で最終的にプレートを特定する事が可能です。
プレート数の少ないペニーブラックやペンスブルーではここまでの事になる事態はそれ程起こりませんがペニーレッドでは頻繁に発生します。プレート数が多いペニーレッドでは似たようなチェックレターの形状というのは必然的に多くなるので、プレートの特定が非常に難しい個体も結構あります。
あらゆる専門書籍を使って調べても尚プレートが特定できないものは、ネットで情報がないか調べるか或いは有償になりますがプレーティング業者にプレーティングを依頼するという手もあります。
プレーティングの代行を承ります
ヤングスタンプではペニーブラック、ペンスブルー、ペニーレッドのプレーティングを代行します。
できればプレーティングはご自身で楽しんで頂くのが一番ですが、これまでに紹介した最低限の資料、機材、経験が必要になるので難易度は相当に高いです。ですので自分では無理だと言う場合は当店が代わりにプレーティングを行います。ただしプレーティングするには個々の切手の情報が最大限必要になりますので、下記の条件を満たした切手に限ります。
- 4マージンの物
- 3マージン以下だがチェックレターとスターは外枠も含めて完全に残っている物
プレーティングにおいてチェックレターとスターは完全な状態で残っていないと正確なプレーティングは行なえませんのでご了承ください。またチェックレターとスターが完全に残っていたとしても経年のスレで印刷が極端にかすれてしまっている物も正確なプレーティングはできません。
例えば消印で左右いずれかのレター部分が完全につぶれてしまって全く見えないががもう一方は鮮明に残っている・・・といった場合、もしかしたら1文字だけでもプレーティングが可能な場合もございます。こうした切手をお持ちの場合は一度ご相談ください。
尚、ペアやストリップ或いはそれ以上のブロックの場合は、どれか1枚だけチェックレターとスターが完全に残っていればプレーティングが可能ですのでこの限りではありません。
プレーティング代金はペニーブラックとペンスブルーは1枚1万円。ペニーレッドは1枚2万円です。
プレーティング代行サービスはヤフオクに出品していますのでそちらをご落札ください。
まとめ
ペニーブラック、ペンスブルー、ペニーレッドのプレーティング方法についてここまで解説してきましたが如何でしたでしょうか。
これまでの年月で何冊か発刊されてきた専門書籍だけを頼りにプレーティングをするのも全然構いませんが、実際にプレーティングの世界では日々同好の士や専門家がネット上で盛んにディスカッションしていますし、その中で新たな発見も度々されています。
こうした事からも定期的に内容がアップデートされる高解像度データを入手してプレーティングを行う方がより合理的で正確だと思いますし、事実私はその様に感じたので書籍はあらかた処分して現在のスタイルに完全移行しました。
プレーティングはペニーブラックやペンスブルーそしてペニーレッドをより深く研究する上では必須です。プレートがわかれば具体的な印刷時期がわかるのはもちろん、押された消印が妥当なものかどうかという真贋の判定もできるようになります。※例えばペニーブラックのカバー(エンタイア)であればマルタ十字消印のほかに日付印も押されているので、ペニーブラックのプレーティングができれば発行日も判明しますから日付印と照合して適正使用か或いはそうでないか(贋作)の判断ができるようになります。
揃える必要があっても入手が面倒な物もありますが、一度揃えてしまえばずっと使える物ばかり。そしてプレーティングはステイサム博士の様に生涯を捧げて探究する価値のある専門分野です。
今の日本にプレーティングを正確に行える人が何人居るか知りませんが、世界的に見ればペニーブラックに代表される世界初の切手をとことん研究されているコレクターは数多いらっしゃいます。
是非この記事を読んだ貴方も、奥の深いプレーティングの世界へ一歩踏み出してみてください。きっと一生の趣味になることでしょう😊